金杉台地の谷(3) 生きている廃川
ひきつづき、金杉台地の谷を巡ります。
今回は、過去2回で辿ってきた谷とは別の、東側を流れる谷を下流から上流へさかのぼっていきます。
春日部市立川辺小学校近く、中川低地の北東縁を流れる用水路の堀端にやってきました。ここから伸びている道は細くて暗渠らしさがあるのですが…?
用水路の側には写真のような、水門を伴った逆止弁つきの排水口しかありません。こちらは合流口ではないようです。
r42。暗渠はここからはじまります。
道と暗渠がきれいに半分に分かれています。
小学校のはずれで少し折れています。正面に続く通路は横の小さな墓地に入っていくのですが、新しそうでもあり何か気にかかります。台地の縁なので、もしかしたら湧水が湧いていた等、利用されにくい立地条件だったのかもしれません。
すぐ先で開渠になります。下流の暗渠を振り返ってみたところです。谷底ではなく谷の東縁を流れていて、道や地面と高低差があるのがわかります。
開渠をさかのぼります。交差する道と水面とはかなり高低差があります。
この先で開渠は東に直角に折れます。このあたりは金杉台地の谷(2) 中川低地へでの、蛇行蓋暗渠を抜けて西からの開渠と合流する地点の裏手です。本来はこの開渠も一緒に合流していたものが、谷の東縁に分離して付け替えられたのではないでしょうか。
直角に曲がります。このあたりは地形上、周囲に降った雨が集まってくるので、水が溜まりやすいのでしょう。この開渠が分離されているのは滞留をなるべく避けるためなのかもしれません。
曲がる地点から下流側を見ます。欄干代わりのガードレールがずっと続いていくのが見え、一直線のまっすぐな流路なことがわかります。
上流側。こちらもまっすぐに続いていきます。
1ブロック先で道を斜めに横断します。
まっすぐの開渠から蛇行する暗渠に変わります。
蛇行・護岸・パイプの3点セット。
橋の跡とパイプ。この先は柵がついていて入れません。
柵の向こう側の暗渠は苔むしていました。
橋と車止め。その先にはつきあたりが見えています。
つきあたりの正体は、金杉台地ではお馴染みとなった雨水調整池でした。
この調整池は今まで見てきた、水路とは独立して雨水だけを溜め込むものと違い、水路と一体となって流れを一旦プールするダムのような構造になっています。
調整池に流れ込んでくる水路が見えます。
裏側に回りこみます。住宅の間から調整池に落ちていく水路があります。
水路は住宅地の街路の側溝となって上流に続いていきます。
側溝はこの先で終わるのですが、その手前の消火栓のあたりが気になります。
何かが合流してきます。
裏側に回ってみてみると、ところどころ蓋の欠けた水路です。
その先はダイナミックな風景が広がっています。
わずかな空間ですが、台地上から自然のままの谷を見下ろす感覚が味わえます。
右にまっすぐ続くのが谷底の側溝水路、左に続くダイナミック空間は住宅の裏手を半円状に迂回しています。
その分岐点で側溝はくるりと向きを変えて・・・
細いU字溝となってスーパーの裏手に消えていきます。
回り込んでスーパーの表側に出てきました。
スーパーとドラッグストアの敷地の境界に奇妙な段差があります。このあたりが上流端になります。
以上で金杉台地を刻む谷の紹介は終わりです。簡単に総括してみましょう。
これらの谷は離れ小島のようになってしまった庄内領の台地の上にあります。水源としてはあまり豊かではないでしょう。
前半の2本の記事で紹介した谷は、源流こそまとまった空間が残されているものの、途中は住宅地に利用されるか否かという違いはあるものの、ほぼ全ての土地が開発されて川跡の面影を残す場所はあまりありません。
降った雨水は谷底に流れ込む前に雨水溝に誘導され、川跡や暗渠を介しません。
今回の記事で紹介した谷は、住宅地として開発されながらも、開渠/暗渠やそれに伴う空間がはっきりと残されています。
ダイナミック空間の反対側あたり、住宅街となっても谷底の水を集める小水路が健在です
この二者の違いをどう捉えればいいでしょうか。
一つの見方をすれば、前者は利用できる土地を有効に活用しているといえます。大部分の土地は住宅と道路になり、駐車場や空き地になっている土地も、何かに利用されることが前提になっています。利用できない部分も綺麗に整備されて、もとの地形や川をあまり感じさせない雰囲気になっています。
翻って後者は開渠など、未整備の利用されない土地がそのまま残り、開発と未開発が混在しています。土地利用としては効率が悪いといえるかもしれません。お世辞にも綺麗で清潔とはいえない未開発の空間は、古臭さを隠しようもありません。
この見方では、前者は新しく洗練されていて、後者は古くて野暮ったいということになります。
では反対の見方をしてみてはどうでしょう。水の流れに着目していえば、見える印象からだと前者は水の流れが希薄です。雰囲気だけではなく実際に、流れる水量が少ないのではないかと思います。整備されて水の流れが断ち切られる以前から、あまり水量豊かではなく雨水を流す役割が主だったように感じられます。川としては早くに役目を失っている、つまり古い存在だったのかもしれません。そして古くて役割がないゆえに、開発され姿を失うこともできたのでしょう。
後者は水の流れが濃厚です。実際に開渠で流れを目にすることもでき、現在も水が流れていることがはっきりわかります。そして水路本体や周囲の様子からも、一定の水量が流れている川であることが読み取れます。川としての役割を保っているからこそ、開発されても姿が残ってしまったということになります。住宅地化したときには、またこの谷は現役使われる、新しいものでした。
川としての見方では逆に、前者は古くて不要なもの、後者は新しくて必要なものになってしまいます。
地上で新しいものが地下では古く、地上で古いものが地下では新しい、その相反する二面性を両者はもっています。それは千葉であって、埼玉である。中川低地という海に面していて、台地という島である。二面性をもったこの土地の因縁によっても飾られています。
埼玉応援記事と題しながら千葉の話題を前面に出してきてしまって反省しています。
もちろん千葉も埼玉もどちらも応援していますので、どっちも勝者になることを期待しています。
こちらの記事にも、続編はおそらくありません。
今回は、過去2回で辿ってきた谷とは別の、東側を流れる谷を下流から上流へさかのぼっていきます。
春日部市立川辺小学校近く、中川低地の北東縁を流れる用水路の堀端にやってきました。ここから伸びている道は細くて暗渠らしさがあるのですが…?
用水路の側には写真のような、水門を伴った逆止弁つきの排水口しかありません。こちらは合流口ではないようです。
r42。暗渠はここからはじまります。
道と暗渠がきれいに半分に分かれています。
小学校のはずれで少し折れています。正面に続く通路は横の小さな墓地に入っていくのですが、新しそうでもあり何か気にかかります。台地の縁なので、もしかしたら湧水が湧いていた等、利用されにくい立地条件だったのかもしれません。
すぐ先で開渠になります。下流の暗渠を振り返ってみたところです。谷底ではなく谷の東縁を流れていて、道や地面と高低差があるのがわかります。
開渠をさかのぼります。交差する道と水面とはかなり高低差があります。
この先で開渠は東に直角に折れます。このあたりは金杉台地の谷(2) 中川低地へでの、蛇行蓋暗渠を抜けて西からの開渠と合流する地点の裏手です。本来はこの開渠も一緒に合流していたものが、谷の東縁に分離して付け替えられたのではないでしょうか。
直角に曲がります。このあたりは地形上、周囲に降った雨が集まってくるので、水が溜まりやすいのでしょう。この開渠が分離されているのは滞留をなるべく避けるためなのかもしれません。
曲がる地点から下流側を見ます。欄干代わりのガードレールがずっと続いていくのが見え、一直線のまっすぐな流路なことがわかります。
上流側。こちらもまっすぐに続いていきます。
1ブロック先で道を斜めに横断します。
まっすぐの開渠から蛇行する暗渠に変わります。
蛇行・護岸・パイプの3点セット。
橋の跡とパイプ。この先は柵がついていて入れません。
柵の向こう側の暗渠は苔むしていました。
橋と車止め。その先にはつきあたりが見えています。
つきあたりの正体は、金杉台地ではお馴染みとなった雨水調整池でした。
この調整池は今まで見てきた、水路とは独立して雨水だけを溜め込むものと違い、水路と一体となって流れを一旦プールするダムのような構造になっています。
調整池に流れ込んでくる水路が見えます。
裏側に回りこみます。住宅の間から調整池に落ちていく水路があります。
水路は住宅地の街路の側溝となって上流に続いていきます。
側溝はこの先で終わるのですが、その手前の消火栓のあたりが気になります。
何かが合流してきます。
裏側に回ってみてみると、ところどころ蓋の欠けた水路です。
その先はダイナミックな風景が広がっています。
わずかな空間ですが、台地上から自然のままの谷を見下ろす感覚が味わえます。
右にまっすぐ続くのが谷底の側溝水路、左に続くダイナミック空間は住宅の裏手を半円状に迂回しています。
その分岐点で側溝はくるりと向きを変えて・・・
細いU字溝となってスーパーの裏手に消えていきます。
回り込んでスーパーの表側に出てきました。
スーパーとドラッグストアの敷地の境界に奇妙な段差があります。このあたりが上流端になります。
以上で金杉台地を刻む谷の紹介は終わりです。簡単に総括してみましょう。
これらの谷は離れ小島のようになってしまった庄内領の台地の上にあります。水源としてはあまり豊かではないでしょう。
前半の2本の記事で紹介した谷は、源流こそまとまった空間が残されているものの、途中は住宅地に利用されるか否かという違いはあるものの、ほぼ全ての土地が開発されて川跡の面影を残す場所はあまりありません。
降った雨水は谷底に流れ込む前に雨水溝に誘導され、川跡や暗渠を介しません。
今回の記事で紹介した谷は、住宅地として開発されながらも、開渠/暗渠やそれに伴う空間がはっきりと残されています。
ダイナミック空間の反対側あたり、住宅街となっても谷底の水を集める小水路が健在です
この二者の違いをどう捉えればいいでしょうか。
一つの見方をすれば、前者は利用できる土地を有効に活用しているといえます。大部分の土地は住宅と道路になり、駐車場や空き地になっている土地も、何かに利用されることが前提になっています。利用できない部分も綺麗に整備されて、もとの地形や川をあまり感じさせない雰囲気になっています。
翻って後者は開渠など、未整備の利用されない土地がそのまま残り、開発と未開発が混在しています。土地利用としては効率が悪いといえるかもしれません。お世辞にも綺麗で清潔とはいえない未開発の空間は、古臭さを隠しようもありません。
この見方では、前者は新しく洗練されていて、後者は古くて野暮ったいということになります。
では反対の見方をしてみてはどうでしょう。水の流れに着目していえば、見える印象からだと前者は水の流れが希薄です。雰囲気だけではなく実際に、流れる水量が少ないのではないかと思います。整備されて水の流れが断ち切られる以前から、あまり水量豊かではなく雨水を流す役割が主だったように感じられます。川としては早くに役目を失っている、つまり古い存在だったのかもしれません。そして古くて役割がないゆえに、開発され姿を失うこともできたのでしょう。
後者は水の流れが濃厚です。実際に開渠で流れを目にすることもでき、現在も水が流れていることがはっきりわかります。そして水路本体や周囲の様子からも、一定の水量が流れている川であることが読み取れます。川としての役割を保っているからこそ、開発されても姿が残ってしまったということになります。住宅地化したときには、またこの谷は現役使われる、新しいものでした。
川としての見方では逆に、前者は古くて不要なもの、後者は新しくて必要なものになってしまいます。
地上で新しいものが地下では古く、地上で古いものが地下では新しい、その相反する二面性を両者はもっています。それは千葉であって、埼玉である。中川低地という海に面していて、台地という島である。二面性をもったこの土地の因縁によっても飾られています。
埼玉応援記事と題しながら千葉の話題を前面に出してきてしまって反省しています。
もちろん千葉も埼玉もどちらも応援していますので、どっちも勝者になることを期待しています。
こちらの記事にも、続編はおそらくありません。
by blognest
| 2016-03-29 23:42
| 千葉県好きですか
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